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[熊本] 私を狂わせた店 WOODPECKER

[熊本] 私を狂わせた店 WOODPECKER

誰がテーマを決めたのか、大それたテーマでの人生初のコラム?である。いわゆる出版社(タウン誌)に18年も勤務しながら、自他ともに認める「誰よりも街で遊ぶ」社員だったにもかかわらず、一度も編集部という自由に物書きができる部署への配属はナシ。ずっとスーツを着て地べたを這いずり廻る“営業”部署で、出版社人生を終えたコンプレックスの塊アラフォー男子が書くコラム。

 

 

さてコラムを書くにあたって「狂う」を調べると、①精神が乱れ正常な考え方ができなくなる。気が違う。②度を越して夢中になる。また夢中で激しく動く。と、ある。そんな状態にさせるお店ってあるか!? それこそ血筋から言うと気狂う可能性があるのはオンナくらい。ひい爺さんは2号さんを2ヵ所抱えていた豪傑。実の息子(俺の爺さん)には高校に行かせず、2号さんの娘さんは九女にやったげな(^^;。あの当時、私立に矢部からやるのはまさに気狂いピエロ。イカン。話が逸れてしまった。

 

 

で、人生振り返ったらオンナ以外に狂ったのは音楽・レコードだったことを思い出した。その中心は、今はなき『ウッドペッカー』の2階。レコードを買い始めたのは高校3年。レコードプレイヤーは持ってなかった。矢部から盗んだバイクで90分。熊本バスビル付近に駐輪。勝烈亭で白飯3杯、キャベツ3回お替わり。まだ人通りの少ない新市街をいきがって歩く。田舎者の街遊びは早い。CD買うのは下通りの名店『マツレコ』。2階にいた熊さんが社長と思ってた。そこから馴染みの薄い上通りを抜けて、並木坂の入口から左折して右手の狭い階段、レコードがうず高く積まれた雑然としたかび臭い店内。ここが、『ウッドペッカー』。『ウッドペッカー』を知ったのはタンクマに毎月載っていた広告だ。入荷予定のレコードが、極小のフォントでビッシリ書かれていた。怪しくて、でも、憧れていたお店。なんだか悪いところに来たみたいで(海賊版のCD、ビデオもあったから実際に悪いことしてたw)、大人の仲間入りした気分だった。

 

 

矢部を出て市内の大学に入学し、レコードプレイヤーもバイトして購入。サッカー部の合間にバイトしたお金と奨学金4万円と仕送りからレコードにつぎ込む生活がスタートしたのだ。

 

 

『ウッドペッカー』と言えば、名物店長のケンレノン(自分でそう呼ぶ)と福田さんの存在なくして語れない。カウンターの向こうでタバコをふかしながら、入荷した新譜と中古の買取査定をしている2人。森さんとか福園さんも居たけど、やっぱりこの2人なのだ。話しかけるなんて怖すぎる。カウンターと売場はドーバー海峡の荒波に近い。って知らんけど。

 

 

そんなこんなで大学4年も経過。ひょんなことから前述のタウン誌タンクマに入社することに。不本意ながら営業に配属になった私は真っ先に「ウッドペッカーさん担当したいです」。あの憧れの広告を自分で担当する日が来るとは! 当時の教育担当T氏から許可をもらい、晴れて広告担当に。引継ぎの挨拶で訪れると「あー、よく来とるよね。入んなっせ」とまさかのカウンター入りを許される。大相撲の土俵女人禁制よりハードルが高いと思われていたカウンター入りはあっけなく果たされてしまった。

 

 

そこからはレコード収集に拍車がかかる。やめられない、止まらない。なんせ入荷情報は一番に手に入る。中古の買取もお店に出る前にカウンター内でわかる。広告はソリッドデザインさんが完全データで制作してくれるから打ち合わせ不要なのに、打ち合わせと称して堂々とレコード屋で珈琲を飲む日々。年末のボーナスはウッドペッカー恒例の大晦日大セールですべて消える。100枚くらい買ってたな。

 

 

薄給でこんなことしてたら生活できなくなるのは、故郷のおちかラーメンを喰った夜のおならが臭いということより明らかだ。奨学金返済はもれなく滞納。遊ぶ金は当時の彼女、現奥さん持ち。実家から送られてくる白米に感謝。まさに私を狂わせたお店(勝手に狂っただけだが)『ウッドペッカー』だったわけだ。

 

 

そんなお店も時代の流れには逆らえない。今でこそレコード復活! なんて言われているが、売上が厳しかったのか20〇年に閉店。その後移転して復活、福田さんもレコ屋を出しておられるが、私はめっきりレコードを買わなくなってしまった。

 

 

「それじゃ音楽・レコードが好きなんじゃなく、ウッドペッカーが好きだっただけじゃん」

 

 

そんな声が聞こえてきそう。そうなんです。私を狂わせていたのは、そこだけの匂い、空気、そこに行かないと出会えない人たちが集うお店そのものだったのかもしれない。

 

 

街で遊ぶ楽しさ、ワクワク感。レコードはあまり買わなくなったけど、最近また若い子たちがレコード買って、イケてるパーティやってて、また街が楽しい。洋服屋は少なくなったけど、センスの良い友達から買いたい。以前より少し遣えるようになったお金は、食事とお酒に向かっている。店主のこだわり、生産者の想い、その空間を共にするのは大切な仲間だ。そんな魅力的なお店が集まる街が、好きなんだよな。私を狂わせるお店。これからも抗わずに、素直に狂っていきたいと思った。オンナに狂うのはダメ、ゼッタイ。

 

この記事のライター

荒木 久尚

熊本でタウン誌を発行するウルトラハウスに18年間勤務。 現在は、広告代理店の社長として広告の提案〜プロデュースなど幅広く携わる。 興味があることは、広義の意味でのファッション(音楽、映画、洋服、アート)。

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