温泉が世界を救う!…ハズ。
温泉ソムリエによる、愛すべき温泉の話。
九州各県の温泉ソムリエが愛する温泉について語ります。
一周目は家族湯!
皆さぁ、おやっとさぁ。(皆さん、お疲れさま。)
身長6尺、体重30貫。薩摩の英雄、西郷さんと同じ体型の温泉ソムリエ師範六三四(むさし)でごわす。鹿児島と宮崎の温泉そのほとんどを巡った薩隅日温泉ヘンタイごわす!
生粋の薩摩隼人の僕が鹿児島だけでなく宮崎の温泉も巡った理由。
それは三国名勝図会(さんごくめいしょうずえ)と薩隅日地理纂考(さつぐうにちちりさんこう)にあります。
名勝図会は江戸時代後期に薩摩藩10代藩主島津斉興公が領内、現在の鹿児島県と宮崎県一部の地誌編纂を命じたもので、明治期の地理纂考へと継承されています。
これには鹿児島、宮崎の名所が記され、そして温泉の事も書かれてあります。
名勝図会と地理纂考に書かれているならば宮崎の温泉も入らねば!と単純に思った次第です。はい。理由はそれだけです。
うん・・・オイはやっぱい温泉ヘンタイじゃ。
さて、今回は宮崎の家族湯です。その前にひとこと。
「宮崎には温泉ないですもんね~」宮崎での講演やセミナー後、そんな悲しい言葉を耳にします。確かに九州の他の県と比べると宮崎にはあまり温泉のイメージがないかもしれません。
しかし、県北、県央、県西、県南各地域にいくつもの温泉施設があり、希少な泉質、素晴らしく湯使いの良い温泉があるのです。
「宮崎の温泉は本当にいいんです!(いつも言っているのよね・・・)」まあ、宮崎の素晴らしすぎる温泉の数々は次の機会にゴシッち、お伝えするとして(←オイっ!)、今回のテーマである宮崎の家族湯についてお話ししたいと思います。
宮崎には鹿児島や熊本のような家族湯のみの温泉施設はほとんどありません。
理由として温泉地数は佐賀や長崎をわずかに上回っているものの、湧出量は大分県の10分の1以下と湧出量の絶対数が少ない。
また、療養泉でない、あくまでも温泉法上の温泉や冷泉の沸かし湯も多いため家族湯のみでは費用対効果があまりにも悪すぎるなどいくつか要因があげられます。
その為、今後も家族湯単体での施設増加はないと考えるのが至極普通ではないでしょうか。
令和元年現在、大浴場を有し、隣接する敷地に12室の家族湯がある「ゆぽっぽかかしの里(都城市)」や11室の家族湯がある「こばやし温泉美人の湯(小林市)」は宮崎の家族湯としては貴重な存在なのです。
宮崎には第三セクター系の大型温浴施設が多いです。
他県の三セク系施設と同様に贅を凝らした家族湯、あるいはバリアフリー対応の福祉浴室もあります。
「カリコボーズの湯ゆた~と(西米良村)」には内湯、露天だけでなくサウナもついた貸切湯。
「石崎の杜歓鯨館ホエルカム(宮崎市)」には車いすの方も座ったまま利用出来るスライドリフター付の福祉風呂など。
温泉宿や温泉ホテルで見てみると1室のみの家族湯、または貸切湯が概ねあります。
施設規模によっては宿泊者数に応じ、時間を定めた男女別浴場専有使用も出来るサービスを提供しているところもあります。
「子宝・安産の宿地蔵庵(宮崎市)」のような宮崎を代表する良泉も貸し切り出来る場合もあり、シルクのような湯に包まれながら無上の喜びにひたるのです。
宮崎を代表するホテルにとんでもない家族湯が出来るらしい。
この報を受けたのは2016年1月でした。
その後、早く行かねばと常々考えてはいたのですがオープンして3年後の2019年2月にようやくテレビ番組のロケで初訪問となりました。
そこは「フェニックスシーガイアリゾート(宮崎市)」。
この超大型リゾートホテルに「松泉宮(しょうせんきゅう)」と名付けられた温泉があります。
その名の通り日向灘に面した約 10km 続く松林の中に設けられた温泉です。
そして、今回のテーマでもある家族湯(貸切湯)も「松泉宮」にはあり、露天風呂と東屋が設けられた贅沢な設えの家族湯で非日常をゆっくり堪能する事ができます。
松泉宮にあるひとつの家族湯。
いや、湯室と呼ぶ方が正しいかもしれません。
入浴という日本の伝統文化を茶道や華道といった『道』になぞらえ、新たな道「湯道」を確立したのが松泉宮「おゆのみや」です。
この「湯道」を提唱するのは熊本県ゆるキャラくまモンの生みの親でもある、放送作家の小山薫堂氏。
小山氏が提唱する「湯道」とは、究極の「湯」の作法、様式、芸道のことで華道や茶道に決められた美しい手順、所作があるように、湯道にも湯、自己、他者と深く向き合うための作法が存在するとの事。
作法は湯に感謝する「合掌」にはじまり、水分補給の「潤し水」や、かかり湯「湯合わせ」など9つの所作からなる入浴の手順があります。
確かに温泉ソムリエ的入浴法にも通じる理にかなった作法です。
また、湯道構成要件は作法、湯道具、湯室という3つの要素からつくり出されるという事であり、一流の職人や芸術家が手掛けた作品にも神秘性を感じる事ができるのです。
「おゆのみや」は感謝の念や自己を磨くに相応しい場に違いありません。
とはいえ、百聞は一見に如かず。「ただのおしゃれな家族湯でしょ」という方もきっと少なくないと思います。
確かにラグジュアリーな空間に違いはありません。
しかし、湯道作法を忠実に真摯に行う事で見えてくる湯の道。
温泉ビギナーはもちろんのこと、温泉ベテランや温泉ヘンタイも「湯道」の本質に触れ、もう一度自身のフロ人生と真摯に向き合う、そんな時間を持つ事がきっと出来るのではと考えます。
他の家族湯や貸切湯でフロ人生と向き合うなんて事は絶対にしないでしょうから。
宮崎の家族湯は決してあなどることなかれ!フロ人生って何だよ!(笑)
こばやし温泉美人の湯 家族温泉 | ◆住所 |
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カリコボーズの湯ゆた~と | ◆住所 |
石崎の杜歓鯨館ホエルカム | ◆住所 |
子宝・安産の宿地蔵庵 | ◆住所 |
フェニックスシーガイアリゾート | ◆住所 |
2019.07.31
2019.07.19
2019.09.25
2019.08.01
2019.07.27
2019.12.18