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[長崎] あの人に逢いたい Story.1/長崎中から人が集まるパン屋さん

[長崎] あの人に逢いたい Story.1/長崎中から人が集まるパン屋さん

2019.08.22

#パン #移住

人生は“予期せぬ”ことの連続らしい。
ならば、一つひとつがすべて違うあの人の人生は
あの時、あの場所で、どんな風に動いたのか聴いてみよう。
他の誰とも似ていない、あの人だけの、人生のはなし。

家も仕事も2回なくした夫婦が、全て”0”からスタートして大人気店へ。
努力のパン屋さん「ちわたや」まで逢いに行き、
お店が出来るまでの波乱万丈な道のりや
人気の秘密を取材してきました!

 

 

「34歳、家も仕事も2回なくなりました」全て”0”からスタートして大人気店へ。努力のパン屋さん「ちわたや」を知ってますか

こんちゃっす!長崎で「猫町飯店の休日」ってブログを書いております猫町です!

普段から長崎県内いろんなところのパンをモグモグしてるんですけどね、

その中でもズバ抜けて印象に残るパン屋さんがあるのです。

そしてどうもその想いはわたしだけでないらしい

今では長崎中から人が集まるパン屋さん。それが今回ご紹介する「ちわたや」です。

 

2017年4月14日にオープン

パッと見にはパン屋さんとは思わないっすよねこの建物。

築70年の古民家を改装してちわたやは生まれました。

 

オープンから話題を呼び2019年6月現在インスタグラムのフォロワーは4,600人超え

午後すぎには売り切れの日も多い大人気のパン屋さんとなっております。

ただお店の立地的にはそんなに恵まれてるとはいえないんです。

  • 長崎市内から車で2時間近くかかる
  • 町中にあるわけでもない
  • 国道に大きな看板があるわけでもない。
  • TVのCMを流したわけでもない。

はてはて。シンプルにある疑問が浮かびますよね。

「なぜこんなに人が来るんだろう?」

そんな「ちわたや」の魅力を紐解くべくオーナーご夫妻にお話を聞いてきました。

(左)前野 高宏さん (右)前野 麻琴さん

 

いつも笑顔のお二人。

「ちわたや」にパンを買いにきた人はその温かい笑顔の印象が強いと思います。

この日も終始にこやかで人柄の良さを再認識。

 

高宏さんはインタビュー中、乱入してきた近所のキッズに何回も執拗に浣腸をされていましたが終始笑顔でした。強い。

さりげなくお尻を浮かしインサートしやすい角度をキッズに提供するなど年齢の垣根を越えた気遣いをみせ、ぼくは「優しいなぁ」って感心しました。

「猫町さんもよかったら…」という言葉に備え自然と中指に力が入ります。

そんな口元もお尻もゆるみっぱなしのピースフルな空気だったんですが

インタビューの内容はかなり壮絶でしたね。SUGEEE!!ってなった。

 

人気店になるまでのストーリーは決して順風満帆なものではなく、絶望や決断の連続だったのです。

ニコニコ話すお二人に対して

「(いや、それは笑える場面じゃねぇ)」

と何度も思ったのでした。

 

 

東日本大震災を受けて九州へ

熊本から長崎に移住される前から開業されてたんですか?

実は最初は千葉県に住んでたんですよ。パン屋さんじゃなく普通のサラリーマンと主婦でした。

東日本大震災があってちょうどその時、子供が小さかったんでいろいろ考えて

 

「九州のほうに引っ越そう!」

 

って決断して熊本市内に引っ越したんです。当時熊本は被災者の受け入れが充実していたんです。

最初からパン屋さんってわけじゃなかったんですね。

そうなんです。もともとわたしがパンが好きで自宅でパンを作ってたんですが
熊本でパン教室をされてる方に出会って、それが自家製酵母で作るパンだったんです。

 

その方のパン教室に通ううちに本格的にプロとしての技術を学びたくなり弟子入りしました。

 

そこからその技術を習得する日々が始まったんです。

修行時代のエピソードはありますか

もう毎日がほんっっと必死でした。

 

肌ボッロボロ、手なんかドロドロになって、ただれたみたいな感じになったり…

 

でもこの技術は絶対モノにしないとって、習得しなきゃって思った。

 

これは「自分たち家族だけでも生きていける強み」になる、他のパン屋さんとは全く違う作り方をされているから武器になるって確信がありました。

 

先生の元を離れても日々試行錯誤してひたすらパンを作っていました。これが今のちわたやの土台になっています。

 

ただ熊本市内にいた時にはまだパン屋さんとしては開業はしていませんでしたね。

 

 

新築を即売却!異職種への転職!激動の中で立ち止まり考えた「家族との時間」

千葉から九州への引っ越しとなると住まいや仕事なんか工面が大変だったんじゃないですか?
実は千葉では新築の家を建てたばっかりだったんです。震災が3月11日だったんですけど家の着工は1月で。3月に家の基礎ができたばかりって状況だったんですよ。
出来立てホヤホヤじゃないですか…決断だったんですね…

新築の家に住んで最初は放射能の怖さとかイマイチわかってなかった状況だったんですけど調べていくうちにこれは決断するところだと思いました。

 

妻が先に子供を連れて熊本に行って、ぼくが千葉に残り家が売れるのを待ちつつ転職活動といった形をとりました。

 

そのあと、無事家も売れ、熊本への転職も決まったんですけど問題があって
それまでデスクワーカーだったんですけど熊本には同じような仕事がなくて現場監督として働きだしました。180°違う職種ですね。

ライフサイクルも変わりましたか?

現場仕事だったんで、週に1回休みがあったりなかったり。

 

九州各地に早朝から夜中まで1〜2週間泊りがけとかばかりでした…

 

慌ただしく過ごしていたんですけど少し立ち止まって考えたんです。

 

家族を大事にするために熊本にきたのに結局家族と過ごせない時間を作ってるのは自分だなって

 

妻も「自分たちでなんとかしていけるための武器」としてパン作りを学んでいたのでここで一度生活を見直しましたね。

 

二人で「一緒になにかお店をできたらいいな」とこの頃から思っていました。

そこでついにパン屋さんとして開業・独立するんですね
いやまぁ独立なんですけど、そこから酵素風呂事業を始めました。
!?

たまたま訪れていた南阿蘇村で酵素風呂をされてた方がいて、今度引退するのでその事業を引き継いでくれる人を探していたんですね。

 

オーナーさんのお話を聞かせてもらって感じるものがあって…ご縁に恵まれました形でした。

 

そこで熊本市内から南阿蘇に引っ越したんですよ。

そこではまだパンは販売されてなかったんですか?

酵素風呂事業をメインに運営して

 

併設された休憩スペースをカフェにしてそこを酵素風呂を利用されたお客さん向けにパンを販売したりはありましたけど本格的にはやっていませんでした。

酵素風呂事業はやってみてどうでしたか。

いや、全然ダメでした。

 

集客やマーケティングが全然できていなかったしお客さんのニーズを掴めてなかった。

 

でもその時の痛い失敗があったから今の「ちわたや」があると思います。

間違いなく生きていきてるよね(笑)

 

 

熊本地震で2度目の被災・また家と仕事がなくなった日

酵素風呂事業をなんとか頑張ってやって1年半ぐらいたったころに今度は熊本地震で被災しました。

また被災!?

そうなんです。南阿蘇村は特に被害が甚大で。わたしたちの家は崩れた阿蘇大橋のすぐ近くにあって住むのも仕事も一気に無理になりました。

 

「次どうしよう」

 

って避難生活の中で考えていましたね。

 

でも不思議と気持ちは折れず前向きでした。

一度千葉で被災していろいろ捨てるのを経験してるんで、ここでも全てが0になったけど

 

正直「あっ、またかー」って感じでした。

ファミコンのリセットボタンみたいな感じだよね。

めっちゃライトなノリでおっしゃる

あっ、いや、家族がみんな健康で怪我がなく無事だったからこうやって笑って思い出せますけど…ほんと命あったからって感じですね。

 

酵素風呂事業の物件も住宅ローンで買っちゃったんですよ。だから…

千葉とあわせて家2軒ダメにしてますね。

そこ笑顔で話すところでは…

いやほんと、命あったからですかね(笑)

「どうしようかねぇ〜〜」ってなったけど、結果なんとかなっちゃいましたね!(笑)

(それ一般的には「なんとかした」て言うんですよ!!)

 

 

そして新天地、長崎県東彼杵へ!ちわたや誕生の日

被災後の店舗探しは大変だったと思うのですがいかがでしたか

次はパン1本でやると決めて、最初は熊本県内で探していたんですがダメでした。

 

住居兼店舗。それが私たちが求める条件だったんですけどなかなか見合う物件がなかったんです。

 

時には深夜にも手をいれる必要がある自家製酵母のパンを管理をするためにも住居兼店舗は必須条件でした。

ただそこにこだわるとやっぱり物件は見当たりません。それでも再起をかけ粘り強く探していったんです。

 

そして県外にも目を向けて、いろんなところに物件をみにいくようになったんですけど、その中の候補に長崎県の東彼杵町が浮上してきたんですよ。

決め手になったのは何だったんでしょうか

最初東彼杵を訪れた時、役場の方がすぐ飛んできてくれて懇切丁寧に説明してくれたり

 

「店舗の改装も手伝いますよ!!!協力しますよ!!」とか地元の方々がめっちゃ言ってくださったりして…

 

もちろん町の補助金の制度が整っていたりとかの部分もあるんですけど

 

もう町全体の 「Welcomeの勢い」というかそっちの面での熱意がすごくて

 

「ここでならやろう!」と思わせてくれたんです。

被災して0になったあの時、自分たちで1からやるのはすごいパワーが必要で。

 

その時、東彼杵町の方々の「一緒にやっていきましょうよ!」という熱意のこもった真っ直ぐな言葉はすごく響いたんです。

そこが東彼杵町の魅力につながっているんですね

東彼杵町の中でもここ千綿を中心としたコミュニティは新しくきた人を応援する空気が強くてそこは本当に魅力ですね。

 

今も新しいお店がどんどんできています。

 

わたしたちはパンを通してこの千綿を盛り上げたいと思っていますし、力になれたらって思っています。

 

 

リピーターが続出するパン。自家製酵母の秘密

 

ちわたやのパンの特徴である”自家製酵母”について教えてください

酵母というのはパンを膨らます菌のことですね。

 

自家製酵母って要は「自分たちで1からその酵母を育てる」ってことなんです。

 

わたしたちの場合は果物から天然の酵母菌を育てていまして。

 

オーガニックのレーズンや東彼杵町をはじめとした長崎県内の梨・りんご・ぶどう・いちごなど、なるべく地元の素材を採用しています。

 

その土地で育った果物の酵母で使うことがその土地で作るパンに一番適しているって思っていますので…

わたしたちが普段食べてるパンの酵母とはどんな違いがあるんですか

みなさんに馴染みのあるパンって、柔らかくてふわっふわっのパンだと思います。

 

市販の酵母は膨らませる力が凄いんですよ。そして品質的にもやっぱり安定してます。いつも同じ膨らみ方をするので非常に優秀です。すぐに使えるのも利点ですね。

 

たとえば市販のドライイーストなどを使えば仕込んで数時間で焼けますしふっくらした毎回おんなじパンが焼けます。

なるほどですね。それにたいして自家製酵母は…?

とにかくまず時間と手間がかかりますね。買って来てすぐ使える完成されたものと比べても、そもそもまず酵母を1から育てるとこから始まるんで…何もない状態からだと2週間以上かかります。

ヒエッ!!!

そこからは毎回継ぎ足していくんですけどそれでも酵母の状態をずっと管理しなきゃいけないし、季節の温度帯でも状態が変わってしまう。

 

品質を安定させるためには絶対に人間の目や手が必要です。

 

そして食感に関しても市販のものほどふわっふわにはならないんですよ。

 

だけどそのぶんモチモチしたうちのパン独特の食感が生まれてるのはやっぱり自家製酵母によるものだと思います。

 

自家製酵母は手間も時間もすっごいかかります。

 

でもかける価値はあると思っているんです。

たしかにあの食感はちわたやのパンでしか味わえないんですよねぇ。材料にもやっぱりこだわりがあったりしますか

小麦は九州産を使用しているんですけど農薬不使用のものにこだわってます。

 

国産の小麦ってわりと流通しているんですけど農薬不使用の国産小麦ってなかなか無くて、あってもパン屋さんが使える量の小麦を扱っている農家さんはなかなか無いのが現状なんです。

 

その中で農薬不使用で有機栽培の小麦を作られてる農家さんとのご縁があって感謝してますね。

あと素材のこだわりのひとつとして卵・乳製品を使ってないパンというところもあります。アレルギーの方も楽しんでもらえる優しいパンを作っているんですよ。

 

そうそう、砂糖も黒糖なんです。だからうちのパンは茶色いんですよ(笑)

 

でもなんでそうなるかって行き着く先はシンプルで単純なんですよね。

 

自分達が毎日食べたいと思う体に優しいパン。

そしてお客さんに安心して食べてもらえるパンを作りたい。

 

結局ここに行き着くんです。

 

 

SNSとの付き合い方

画像をクリックするとInstagramにとびます

ほかのパン屋さんに比べSNSの発信活動にすごく積極的ですよね。そこもなにか考えてらっしゃるんですか

むしろそこがウチの核というか。

 

街中にあるパン屋さんじゃないので、「看板があるから寄ってみよう」はないんですよ。

 

店舗も奥まったところにあるし国道に看板もないですし、なにもしなくても来てもらえる場所とは思ってないです。

たしかに車でドライブしている人は気づかず通り過ぎそうです

そんな中、SNSという遠く離れていても見てもらえるツールがあるのならそこに全力を注ぐべきだと思ってて。

 

投稿をみてお客さんに魅力が伝わるように工夫しています、この東彼杵町までわざわざ足を運んでもらうということは簡単じゃないと思ってますから。

SNSなかったらウチお客さんこないっていう意識で投稿してます。頑張りますよね(笑)

 

 

パン屋さんですよね?思わず口をついた瞬間

ちわたやのSNSを見ていると目が覚めるほどの綺麗な写真にオシャレなパッケージラベルが印象的ですがどちらでオーダーされてるんですか?

いや、これ全部わたしたちでやっているんですよ〜。外注は今のとこないですね。

えっ、これも自分たちで?フォトショップやイラストレーターも使えるんですね。

えっ、いや、パワポですよ?

 

えっ!?

えっ

えっ

あれですか、サラリーマンがプレゼンで使うパワーポイントですか?

そうなんですよ。みんな持ってるやつですね。会社員時代パワポ使うことが多くて使い慣れてたってこともあったんです。

 

それで妻にパワポの使い方教えたんですよ。わたしは写真取る専門でそれをどう料理するかは妻なんです。

わたしはもともと大学で美術系のことやってたんですよ。そういうのもあいまって

「これも自分たちでやってみよう」ってなったんです。

 

やってみたらパワポおもしろいじゃん!使いやすい!ってなって(笑)

今では自分たちで企画するイベントの紙媒体(フライヤー等)なんかもすべて自分たちで手がけています。

めっちゃマルチプレイヤーじゃないですか…

フォトショップも持ってるんですけどね…パワポの限られた機能だけでも結構できちゃうんですよ。パワポって結構神ですよ。

フォトショップがないとこんなのできないと思ってた自分が恥ずかしい…

いや、なんかすいません。フォトショップやイラストレーター使いこなしてるカッコいいパン屋さんって書こうとしてました?

 

そんな風に話せれば良かったんですけど…

いや、逆にここまでパワポでできるの凄くないですか…

ほんとはね、オシャレなパン屋になりたい…です…けどね…

ねー…

いや十分オシャレなんで大丈夫ですよ!いやしかし色々やってますね〜パン屋さんですよね?

ありがとうございます。自分たちのアイデアを形にする作業はとっても楽しいんです。

 

SNS上でもお客さんには目でみて楽しんでもらいたいし

 

店頭ではお客さんが手にとってもらえるような商品になるよう頑張りたいですね!

パワポでね(笑)

 

 

「自分たちが心からやりたいこと」が求められる仕事に。変化し続ける ちわたや はSNSで要チェック!

大人気のパン屋さんである一方、そこに行き着くまでには2度の被災で仕事と家を手放した過去、そしてそこから立ち上がり必死で努力された過去がありました。

インタビューしていて思ったのは

自分たちが楽しめる仕事を純粋に追求する姿勢はやっぱ見ててワクワクするし応援したくなるな。ってこと。

「これやりたい!これやったら美味しいよね!こんなことしたら楽しんでもらえるよね!」

「最初はノリでもやるからには本気でやりたい!やれること全部やりたい!」

って発想がいつも頭ん中にあって即行動してガンガン攻めてる。

お客さんに対してもだけど自分たちもアガること考えてるんすよね。

いや

「そらいいモンできるわ」

ってなるよ…

努力家なのに普段はそれを感じさせないお二人。

あくまで自然体のその姿勢には今日も包み込むような穏やかな空気が流れていました。

インタビュー中いくどとなく聞いた酵母を「育ててる」っていう言葉。

「こだわっている」っていうより「可愛がっている」そんな表現がよく似合う。

きっとそんなお二人が作るパンだからこそ味わえる温もりがあるんだろうなって。

興味を持った方はぜひSNSをチェックしてみてください。

そして機会があればぜひ東彼杵町の店舗を訪れて欲しいと思います!

ではでは今日はこのへんで!猫町でした!!

 

 

ちわたや

住所

〒859-3923 長崎県東彼杵郡東彼杵町瀬戸郷1221

TEL

0957-47-1307

営業時間

11:00 〜 16:00 (完売次第終了) 

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